ここ数年で、大企業の不祥事が次々と明らかになっていますね。
東洋ゴムの免震ゴムのデータ偽装、三菱自動車の燃費データ改ざん、スズキの燃費測定に関する不正、最近では日産自動車、スバル無資格検査問題、神戸製鋼所の強度試験結果の改ざん等々・・・・。
と、偽装や不正、改ざん等の品質事故が立て続けに起こっています。
しかし、無資格の方が検査をした車だからといって、強度試験結果を改ざんしたからといって、
それが原因で、何かしら事故が起こったというニュースは報じられていませんよね。
ということは、問題ないんじゃね?と素人の私は思ってしまうのです。
ま、それは一旦、横に置いといて原因を考えてみましょう。
私の経験を基にして現場目線で原因を探ります。
テレビのニュース等では不祥事に対する会見を会社のトップがしてますよね。
まあトップなので、当然のことですが、
さて問題はその会見をするトップがその問題を直接認識しているか?ということですね。
少なくとも問題が発覚してからでも作業服をきて現場に足を運んだトップが
どれだけいるでしょうか?
トップがそんなことしないでしょう。するわけないじゃん。
と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、この感覚こそが少しずれているのかなとも思います。
本田宗一郎さんのことは皆さんご存知だと思います。そうです自動車のHONDAの創業者です。
宗一郎さんは、知識だけでなく溶接から鋳造から何から何まで名人級の技術を持っており、
技術者たちは、口を揃えて、宗一郎さんには歯が立たないと語っていたようです。
そんな方なので当然、社員の目標にもなります。尊敬もされるでしょう。
しかし最近の企業はどうでしょうか?
コストカッターだなんだといって、社外から社長がやってくる。
そして、これからの会社の方針はこうだと、方向転換してしまう。
現場にも当然影響があるわけで・・。
会社経営能力はあっても、会社の事がよくわかっていない、現場で何が起きているかもわからない
知識も技術も持たない人に、方針を変えたからと言われ押し付けられる。
あっ、それから皆さんはご存知でしょうか?製造業の製造現場って、
その会社の社員がほとんどいない事を・・・・。
会社にもよりけりでしょうが、大体が工程単位に、ある会社と請負契約を結んで
下請に任せているのです。そしてその請負会社が派遣で人を集めたりもします。
さて現場に社長の方針が浸透するでしょうか?ほぼ浸透しないでしょうね。
では、なぜ大事な会社の命でもある、製造工程を請負化するのでしょうか?
簡単です。先程出てきたコストカットです。
請負契約にしてしまえば、労務管理もしなくていいですし、コストを下げることができます。
コストカットしたからといってメリットばかりではありません、当然デメリットも出てきます。
請負会社は言われた事を淡々とこなすのみ。
当然、愛社精神なんてないですし、技術やノウハウが社内に残らなくなってきます。
では、別の角度からも考えてみましょう。
皆さんISOってご存知ですか?日本語では国際標準化機構と言います。
ナンノコッチャですね(笑)
簡単に説明しますと、仕事の内容を全てマニュアル化します。
そのマニュアル通りに実施されているかを記録で残します。
それらが確実にできているかどうかをISOが審査し認証を出します。
ということでISOに認証されていれば、その会社では誰でも
同じ仕事ができ、同じ品質で、同じ品物を作ることができる。というものです。
そしてこのISOに基づき、認証された会社は毎年品質目標を定めます。
決まって、前年より高い目標になります。年々高くなっていく訳です。
更に、管理するのは自社で作るものだけではありません。
例えば、車を製造するのに必要な部材を購入する場合、その部材に問題はないか?
購入する企業に問題はないか?等々について評価することも決められています。
当然記録にも残さないといけません。
今回の不祥事で言いますと神戸製鋼所の強度試験結果になるのでしょうか?
これだけの強度があるものを部材として購入したという証明ですね。
今回それが改ざんされていたので、購入企業の品質に影響が出るという事で問題になっている訳です。
では上記の状況を踏まえて、世の中の流れを見て見ましょう。
まず消費者です。消費者は当然安くて品質の高いものを求めます。
当然のことですよね。
ではメーカーはどうでしょうか?
当然、良いものを安く作るために色々工夫をしなければいけません。
- 人件費 : 削減しなければいけません。
- 材料費 : 安く仕入れないといけません。
- 製造費 : これも抑えないといけません。
- 不良品 : 絶対出してはいけません。
- 新商品 : 定期的に出さないと飽きられてしまいます。
- 品質 : 上げ続けなければなりません。
- 販売価格: 上げるわけにはいきません。
しかし、これらを全て満たして商品を作ることはほぼ不可能です。
という事は、どこかに歪みができる訳です。どこかに必ず負担がかかってくるのです。
これらは大体、弱いところにのしかかってきます。
のしかかられた所は表に出さないように頑張ります。ギリギリまで頑張ります。
頑張ってちょっと嘘をついたりもします。
そしてとうとう支えきれなくなって表に出てきます。
これが、数々の不祥事となって出てきている訳です。
求めるものばかりが大きく、厳しく、なってますが・・・。
実際現場では何も変わっていないのかもしれませんね。
実際のところはどうかわかりませんが、
- 全ての車を検査員が検査するとなると、人件費がかかる・・・。
- 依頼された通りに製品の強度を上げたら今の金額では到底無理だ。検査結果をいじってしまえ・・・。
- 燃費悪かったら売れないから少し燃費がいいようにして発売しろ・・・。
- 日本産を使ったらこの値段では売れないから輸入物を使っちゃえ・・・。
- 100%安全という保証はできないけど、安全って言っちゃえ・・・。
- 輸送中は温度管理できてないけど、出来てるように証明書出しとけ・・・。
- 作ったのは一昨日だけど出来立てホヤホヤって言っちゃえ・・・。
- 古い卵を安くで仕入れて使ってるけど新鮮卵って言っちゃえ・・・。
といったようなことが普通に行われているのかもしれません。
日本を代表する企業が行なっているのですから、他の会社がやってても何もおかしくはありません。
話はISOに戻りますが、ISOは定期的に監査が入ります。更新時の認証もあります。
書類関係を中心に監査されます。逆に言えば記録さえしっかりしていればいい訳です。
問題はここですね。記録さえしっかりしていれば、世界的にちゃんとした企業と見てもらえる。
ISOはもともと海外の考え方から入ってきたものです。
海外では製造は工員がするもの、管理者は現場には入らない。
だから誰もが、同じやり方で同じものを作る事ができるマニュアルが必要だった訳です。
一方、日本はどうでしょうか?匠の技とか職人という言葉をよく聞きますよね。
触るだけで0.1mmの厚みがわかる人がいます、手のひらに乗せるだけで0.1mmgがわかる。
まさに職人ですよね。
しかしそんなものマニュアル化できないですし、誰でもできるものではありません。
身につけるには経験しかありません。弟子入りして何年もかかって習得するのです。
これがまさしく、ものつくりの精神ですよね。made in japan神話と言われる所以です。
しかしコストカットを求めるがために機械に頼ってしまいます。
今の企業は誰もができない手順は認められないのです。
何が何でも誰が作っても同じものができるように求められます。
例えるならば陶芸家がろくろを回して作って、登り窯で焼いた味のある器が、
型押しの電気窯で焼いた器に変わり、好まれる世の中になってきた訳です。
しかし、味のある器の方が人気があるので、どこでどう間違えたか、
型押しの電気窯で焼いた器を、登り窯で焼きましたって、偽って売ってしまうんですね。
こうなったらプライドもへったくれもありません。
made in Japan神話は完全に崩れました。
そりゃそうです、こぞって海外のシステムに乗ろうとしているのですから。崩れて当然です。
昔から継承されてきている日本の、ものつくりの良さ、が奪われていっているような気がします。
コストをカットした上に高品質なものを作る、到底できるものではありません。
転職をお考えの方々は、大企業でもこういうリスクがあるんだなという事を
頭に入れておいてください。
転職によるリスクについては転職して絶対に後悔しない為に転職リスクについて考えるにも
書いてますのでよければご覧になってください。
そして、ISOってよくわからないって方は事前に勉強しておいた方がいいと思います。
大企業では必須ですので・・・。